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ステロイドの皮下または筋肉注射

ステロイドとは、副腎皮質ホルモンといって、本来、体の中にあるものですが、現在ではいろいろな優れた効果のあることから、合成されて様々な治療薬として使われています。一口にステロイドといってもいろいろな種類があり、内服薬や注射などその剤型も多様です。ステロイドは様々な作用のある薬ですが、花粉症に使われる場合には、免疫を抑える作用、炎症やむくみを抑える作用を期待して使われます。ステロイドは非常に強い免疫を抑える作用があるため、免疫反応の一種であるアレルギーが抑えられるのです。

ステロイドを皮下または筋肉注射として使用する場合には、1シーズンにおおむね1回、多くても2、3回の注射が行われるようです。注射の回数も少ないため頻繁に通院する必要がなく、効果がよい人の場合には内服薬を全く飲まなくても花粉シーズンを乗り切ることができるようです。

しかし、ご承知のように、ステロイドには様々な副作用があり、ときに重症化するため、慎重に使う必要があります。このことから耳鼻咽喉科の花粉症治療としてはまず行われることのない治療法といえます。これは我田引水を承知でいえば、耳鼻咽喉科医の責任感の表れだと私は思います。花粉症の時期には内科や小児科でも薬を出して対応しているところはあります。実際、全ての花粉症患者さんが耳鼻科に集中すれば対応しきれるものではありません。そして、それらの内科や他の診療科で花粉症の治療を行う場合、ごく一部の医療機関で、ステロイドの注射が行われているようです。

例えば、1回の皮下注射で症状のなかった人が、今シーズンは効果が不十分だったとします。当然、もう1回、注射を希望しますよね。しかし、2回以上注射をするのが医者側でためらわれた場合、どう対処するでしょうか。「2回以上はうたない方がいいので、1回で効果が不十分な場合は耳鼻科に行って相談してくれ」ということになるのではないですか。

耳鼻科医は私も含め、花粉症の人は是非耳鼻科を受診いただきたいと考えている専門科です。その専門科で、2回、3回とステロイドの注射を希望する患者さんが来られた場合、もちろん、耳鼻科医は逃げ出すことはできません。2回目以降の注射を打ってもらえない患者さんはどうしたらいいのでしょうか。本当に救われませんし、お互いに大変つらい状況に追い込まれてしまいます。ですから、我々耳鼻科医はそのようなつらい患者さんを作らないため、ステロイドの注射ははじめからしない、と私は考えています。花粉症に対してステロイドを使用することには賛否両論があります。実際、1回きりの注射なら、ステロイドの使用が禁止されている状態の人を除き、副作用の危険性はそう大きくはありません。しかし、ここで私がいいたいのは、将来的に2回、3回と増えていかないという保証をだれがしてくれるのかということです。副作用の危険性の説明だけで全ての患者さんが納得してくれるほど、世の中甘くありません。そして、「副作用は自己責任という念書を書くから」という患者さんに対して、それなら処方できるという態度を医者がとれるはずもありません。

非常に長くなってしまいました。我々医師はステロイドを日々の診療でごく普通に使用しており、ステロイドだけが重篤な副作用があるかのように一般の方々に思われていることは決していいことではないと考えています。しかし、ステロイドの内服薬や注射は花粉症の方には上記のような理由から使用すべきではないと私は考えています。

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